[NXP マイコン初心者ガイド 10] へ | [NXP マイコン初心者ガイド 12] へ | ||
NXP マイコン初心者ガイド まとめサイト |
もくじ
はじめに
今回は Secure Provisioning Tool(以降、SPT と略します)に搭載されている便利な機能について、紹介します。SPT の概要、インストール方法、起動方法、ならびに基本的な使い方がわからない場合には、先に前回の記事『 [NXP マイコン初心者ガイド 10] Secure Provisioning Tool のインストール方法、使い方 』をご確認ください。
今回の記事で紹介する便利機能は以下の3つです。
- Create manufacturing package(スクリプトと書き込みイメージのパッケージ化)
- OTP configuration (One Time Programmable (OTP) レジスタ/FUSE の設定操作)
- Flash Programmer (ブート用 Flash の読み出し/書き替え)
参考資料: SPT の詳細情報やツールのダウンロードリンクは MCUXpresso Secure Provisioning Tool | NXP Semiconductors を参照ください。
ポイント: SPT の正式なツール名(および略称)は『MCUXpresso Secure Provisioning Tool (SEC)』となっています。NXP 社のドキュメントも SEC で記載されているのでご承知おきください。
以下、各機能ごとに章立てして紹介していきます。
1. Create manufacturing package
1-1. この機能で行える事
この機能を使用すると、SPT を使用して作成したブートイメージの書き込み環境を .zip にアーカイブすることが可能です。
生成される .zip には、書き込みを実行するためのスクリプト、指定したブートイメージ本体など、ブートイメージの書き込みに必要なファイル一式が含まれるので、他の端末や拠点へ書き込み環境を配布する用途に利用できます。
ポイント: この機能を使用する場合には、SPT を使用して、イメージの書き込み、および書き込み後に正常にブートすることを事前に確認された上でご使用ください。
1-2. 使い方
以下、【図1】に .zip の生成方法、【図2】に .zip アーカイブに含まれるファイルの一例、【図3】に .zip アーカイブの使い方(他の端末でインポートおよび書き込みを実行する方法)を示します。
.zip アーカイブの生成は、Write image タブ上のボタンをクリックするのみで実行できます。
【図 1】Manufacturing package(.zip アーカイブ)の生成
Unsigned (認証および暗号化無し) の設定で保存された .zip アーカイブの中身は【図2】のようになっています。Linux / Mac / Windows それぞれに対応したスクリプトと、イメージファイル(bootable_images)および .JSON 形式の設定情報(configs)が含まれます。
【図 2】Manufacturing package(.zip アーカイブ)の中身
.zip アーカイブを SPT にインポートして使用する場合には、File > Import Manufacturing Package メニューを実行します。この操作を行うと、自動的に Manufacturing Tool が起動するため、そのまま複数台のボードへの同時書き込み操作を行う事も可能です。操作イメージを【図3】に示します。
【図 3】Manufacturing package(.zip アーカイブ)のインポート&書き込み
ポイント: Manufacturing Package (.zip アーカイブ) の生成は、他の端末/拠点へのファイル受け渡しが必要無い場合でも、Manufacturing Tool を使用するための書き込み環境一式のバックアップ用途としても活用いただけます。
2. OTP configuration
2-1. この機能で行える事
Fuse (One-Time Programing) の設定値の確認および編集が行えます。
特にデバッグ対象プロセッサーの Fuse の現在値を確認したい場合に便利です。Fuse の書き込み(Burn)も可能となっていますが、誤って書き換えてしまう事が無いように細心の注意を払ってご使用ください。
注記: OTP/FUSE の仕様および書き替え操作については、必ず NXP のデバイスおよびツールの公式ドキュメントを参照の上でご対応ください。変更すると元に戻せないため開発途中での書き替えは推奨されません。
2-2. 使い方
SPT の Build image タブ上にある「OTP configuration」ボタンをクリックすると、OTP configuration ウィンドウが起動します。【図 4】に起動方法および OTP configuration ウィンドウのイメージを示します。
"Current value” と記載される表示枠にて、現在の OTP/FUSE の設定値が確認できます。
【図 4】OTP configuration の起動 および OTP/FUSE の現在値の確認
OTP/FUSE の書き込みを行う場合には、"Required value" と記載される表示枠をクリックすることで編集が行えます。この操作だけでは OTP/FUSE への書き込みは行われないので、"Required value" の編集までであれば試しに触ってみることも可能です。
【図 5】OTP/FUSE に書き込む設定値(Required value)の編集
OTP/FUSE を書き込むためのボタンは、ツール起動後の初期状態では Advanced mode と記載されるチェックボックスにて無効されれています。以下、【図 6】に Advanced mode を有効にした場合に操作可能となる OTP/FUSE 書き込み用のメニューについて示します。
【図 6】OTP/FUSE 書き込み用の操作メニュー
3. Flash Programmer
3-1. この機能で行える事
ブート用に接続された外部 Flash に対して、Erase/Read/Write 等の各種操作が可能です。外部 Flash へのアクセス以外にも、ツール上のバッファーに対するバイナリーファイルの入出力やデータパターンの検索にも対応しています。
パソコン上に保存してあるファイルをバッファー上に読み込んだ上で外部 Flash への書き込みを実行するなど、手順を工夫することで、外部 Flash 上のデータに関わるあらゆる操作が行えます。
3-2. 使い方
SPT 上のメニューバーより、 Tools > Flash Programmer を選択すると Flash Programmer ウィンドウが起動します。【図 7】に Flash Programmer の画面イメージを示します。
【図 7】Flash Programmer の起動および使い方
詳細な使い方については紹介を割愛しますが、左側の各種操作メニューと、データ表示用のバッファーからなる非常にシンプルで判りやすい構成になっているので、直感的に操作頂けると思います。
まとめ
今回は、Secure Provisioning Tool (SPT) に搭載される便利機能を紹介しました。
NXP マイコン初心者ガイドシリーズとして、MCUXpresso 統合開発環境ツールのインストールから開発/デバッグに必要な各種情報を連載してきましたが、当初紹介したかった内容については一通り触れることが出来た状態となります。
本連載については、一旦、今回の記事を最終回とさせていただきます。
[NXP マイコン初心者ガイド 10] へ | [NXP マイコン初心者ガイド 12] へ | ||
NXP マイコン初心者ガイド まとめサイト |